「Apacheって何?」「Webサーバーって言われても、よくわからない…」
Web開発を学び始めると必ず出てくるApache(アパッチ)。世界中のWebサイトを支えてきた老舗のWebサーバーソフトウェアです。
この記事では、Apacheとは何か、どんな特徴があるのか、初心者の方にもわかりやすく解説します。
Apacheとは?
Apache(正式名称:Apache HTTP Server)は、世界で最も長く使われてきたオープンソースのWebサーバーソフトウェアです。
1995年に最初のバージョンがリリースされ、30年近い歴史があります。現在はApache Software Foundationによって管理されており、無料で使用できます。
Apacheの名前の由来
「Apache」という名前の由来には諸説あります。
有力な説の1つは、初期の開発が既存のソフトウェアに「パッチ(修正)」を当てて改良する形で進められたため、「A Patchy Server(パッチだらけのサーバー)」から来ているというものです。
また、アメリカ先住民のアパッチ族に敬意を表して名付けられたという説もあります。
Webサーバーの役割をおさらい
Apacheの説明に入る前に、Webサーバーの役割を簡単におさらいしましょう。
私たちがブラウザでWebサイトを見るとき、裏側では次のようなやり取りが行われています。
- ブラウザが「このページを見せて」とリクエストを送る
- Webサーバーがリクエストを受け取る
- Webサーバーが該当するファイルを探して返す
- ブラウザが受け取ったデータを画面に表示する
Apacheは、この「2」と「3」の部分を担当するソフトウェアです。
Apacheの主な特徴
Apacheが長年にわたって使われ続けている理由を見ていきましょう。
1. 高い信頼性と安定性
30年近い歴史の中で、数え切れないほどの改良が重ねられてきました。世界中の企業や官公庁で使われており、その信頼性は折り紙付きです。
2. 豊富なモジュール
Apacheはモジュールという仕組みで機能を拡張できます。
たとえば、PHPを動かすためのmod_php、URLを書き換えるためのmod_rewrite、セキュリティを強化するmod_securityなど、さまざまなモジュールが用意されています。
必要な機能だけを追加できるため、用途に合わせてカスタマイズが可能です。
3. .htaccessによる柔軟な設定
Apacheの大きな特徴の1つが、.htaccessファイルです。
.htaccessを使うと、ディレクトリ(フォルダ)単位で細かい設定ができます。たとえば、特定のフォルダだけにアクセス制限をかけたり、URLのリダイレクトを設定したりできます。
レンタルサーバーでも.htaccessは使えることが多く、サーバー管理者に依頼しなくても自分で設定を変更できる点が便利です。
4. 動的コンテンツとの相性が良い
ApacheはPHPやPerlなどの動的コンテンツを処理するのが得意です。
特にPHPとの連携は非常にスムーズで、WordPressなどのPHP製CMSを動かすならApacheという選択をする人が多いです。
5. 豊富な情報量
30年の歴史があるため、インターネット上には膨大な情報があります。困ったことがあっても、検索すれば解決策が見つかりやすいのは初心者にとって心強いポイントです。
Apacheでできること
Apacheを使うと、具体的に何ができるのでしょうか。
静的ファイルの配信
HTMLファイル、画像、CSS、JavaScriptなどの静的ファイルをユーザーに配信できます。これがWebサーバーの最も基本的な機能です。
動的コンテンツの生成
PHPなどのプログラムを実行し、リクエストに応じてページを動的に生成できます。ユーザーごとに異なる内容を表示するWebアプリケーションには必須の機能です。
アクセス制御
特定のIPアドレスからのアクセスを許可・拒否したり、パスワード認証をかけたりできます。管理画面など、限られた人だけがアクセスできるページを作れます。
URLのリダイレクト・書き換え
「www」あり・なしの統一や、HTTPからHTTPSへの転送、SEOに適したURLへの書き換えなどが可能です。
SSLによる暗号化通信
SSL/TLS証明書を設定することで、HTTPS通信を実現できます。現在では必須の機能です。
Apacheのメリット・デメリット
Apacheを選ぶ際に知っておきたいメリットとデメリットをまとめます。
メリット
- 実績と信頼性:30年の歴史と豊富な導入実績
- 情報が豊富:日本語の情報も多く、トラブル解決がしやすい
- 柔軟な設定:.htaccessでディレクトリ単位の設定が可能
- PHPとの相性:WordPressなどPHP製CMSとの連携が容易
- モジュールが豊富:必要な機能を追加できる
- 無料:オープンソースで自由に使える
デメリット
- 同時接続に弱い:大量アクセス時にメモリ消費が増大
- 静的ファイルの配信速度:Nginxと比べると遅め
- .htaccessの負荷:ディレクトリごとに.htaccessを読み込むため、多用するとパフォーマンスが低下
Apacheの設定ファイル
Apacheの設定は、主に以下のファイルで行います。
httpd.conf(メイン設定ファイル)
Apacheの中心となる設定ファイルです。ポート番号、ドキュメントルート(公開するファイルの場所)、モジュールの読み込みなど、基本的な設定を行います。
.htaccess(ディレクトリ単位の設定)
各ディレクトリに配置して、そのディレクトリ固有の設定を記述します。サーバー管理者でなくても設定を変更できるのがメリットです。
# .htaccessの例:HTTPSへリダイレクト
RewriteEngine On
RewriteCond %{HTTPS} off
RewriteRule ^(.*)$ https://%{HTTP_HOST}%{REQUEST_URI} [R=301,L]
ApacheとNginxの使い分け
現在、Webサーバーの選択肢としてよく比較されるのがNginxです。簡単に使い分けを整理しておきましょう。
| 用途 | おすすめ |
|---|---|
| WordPressサイト | Apache(PHPとの相性◎) |
| 大量アクセスが予想されるサイト | Nginx(同時接続に強い) |
| .htaccessを使いたい | Apache(.htaccess対応) |
| 静的ファイル中心のサイト | Nginx(配信が高速) |
| リバースプロキシ | Nginx(得意分野) |
| レンタルサーバー | Apache(多くのサービスが採用) |
なお、両方を組み合わせて使うケースも増えています。Nginxで静的ファイルを配信し、動的コンテンツはApacheに任せる構成です。
まとめ
この記事で解説した内容をまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| Apacheとは | 世界で最も歴史あるオープンソースWebサーバー |
| 読み方 | アパッチ |
| 歴史 | 1995年リリース、30年近い実績 |
| 特徴 | モジュールによる拡張、.htaccessによる柔軟な設定 |
| 得意分野 | PHPなどの動的コンテンツ、細かいアクセス制御 |
| 向いている用途 | WordPress、PHPアプリ、レンタルサーバー |
Apacheは、長い歴史と豊富な実績を持つWebサーバーです。特にPHPとの相性が良く、WordPressをはじめとするPHP製Webアプリケーションを動かすなら、まず選択肢に入れるべきでしょう。
最近はNginxがシェアを伸ばしていますが、Apacheもまだまだ現役です。用途に応じて適切に選択できるよう、両方の基本を押さえておくことをおすすめします。