「NoSQLって何?」「RDBとNoSQLはどう違うの?」
データベースを学んでいると出てくるNoSQL(ノーエスキューエル)という言葉。ビッグデータやWebサービスの話題で聞くことが増えましたが、SQLとどう違うのかわかりにくいですよね。
この記事では、NoSQLとは何か、従来のデータベース(RDB)とどう違うのか、初心者の方にもわかりやすく解説します。
NoSQLとは?
NoSQLは「Not Only SQL」の略で、従来のリレーショナルデータベース(RDB)とは異なるタイプのデータベースの総称です。
「SQLを使わない」という意味ではなく、「SQLだけじゃない、新しいタイプのデータベースもあるよ」というニュアンスです。
NoSQLが生まれた背景
従来のRDB(MySQL、PostgreSQLなど)は、長年にわたり信頼性の高いデータベースとして使われてきました。
しかし、2000年代以降、SNSやWebサービスの普及により、大量のデータを高速に処理する必要が出てきました。
- TwitterやFacebookのような、秒単位で大量のデータが発生するサービス
- IoTデバイスからの膨大なセンサーデータ
- 形式がバラバラなログデータやJSONデータ
これらの課題を解決するために、RDBとは異なる設計思想を持つNoSQLデータベースが登場しました。
RDBとNoSQLの違い
RDBとNoSQLの主な違いを見ていきましょう。
データの保存形式
| 項目 | RDB | NoSQL |
|---|---|---|
| データ形式 | テーブル(行と列) | JSON、キーバリューなど多様 |
| スキーマ | 事前に定義が必要 | 柔軟(スキーマレス) |
| データの関連付け | 外部キーで結合(JOIN) | 基本的にJOINは苦手 |
RDBはExcelのような表形式でデータを管理します。一方、NoSQLはJSON形式など、より柔軟な形式でデータを保存できます。
スケーラビリティ(拡張性)
| 項目 | RDB | NoSQL |
|---|---|---|
| 拡張方法 | 垂直スケール(サーバー増強) | 水平スケール(サーバー追加) |
| 大量データ | 限界がある | 得意 |
| 分散処理 | 複雑 | 比較的容易 |
NoSQLはサーバーを追加するだけで処理能力を増やせる(水平スケール)ため、大量のデータやアクセスに対応しやすいのが特徴です。
データの一貫性
| 項目 | RDB | NoSQL |
|---|---|---|
| トランザクション | ACID(厳密な一貫性) | BASE(緩やかな一貫性) |
| 整合性 | 常に保証 | 最終的に整合(結果整合性) |
| 向いている用途 | 金融、決済など | SNS、ログ収集など |
RDBは「絶対にデータを失わない」「常に正確」という厳密な一貫性を保証します。NoSQLは一貫性を少し緩くする代わりに、高速性と拡張性を優先しています。
NoSQLの4つの種類
NoSQLには、データの保存方法によっていくつかの種類があります。
1. キーバリュー型
「キー(名前)」と「値(データ)」のペアでデータを保存する、最もシンプルな形式です。
キー → 値
user:1001 → "田中太郎"
session:abc → "ログイン中"
代表的な製品:Redis、Amazon DynamoDB
向いている用途:キャッシュ、セッション管理
2. ドキュメント型
JSON形式のデータ(ドキュメント)をそのまま保存できる形式です。
{
"name": "田中太郎",
"age": 28,
"skills": ["JavaScript", "Python"],
"address": {
"city": "東京",
"zip": "100-0001"
}
}
代表的な製品:MongoDB、CouchDB
向いている用途:Webアプリケーション、CMS、ログ管理
3. カラム型(ワイドカラム)
大量のデータを列(カラム)単位で効率的に処理できる形式です。
代表的な製品:Apache Cassandra、HBase
向いている用途:IoTデータ、時系列データ、大規模分析
4. グラフ型
データ同士の「関係性」を効率的に表現・検索できる形式です。
代表的な製品:Neo4j、Amazon Neptune
向いている用途:SNSの友人関係、推薦システム、不正検知
代表的なNoSQL:MongoDB
NoSQLの中で最も広く使われているのがMongoDB(モンゴディービー)です。
DB-Enginesのランキングでは、Oracle、MySQL、SQL Serverに次いで第4位にランクインしており、NoSQLとしては最も人気のあるデータベースです。
MongoDBの特徴
- JSON形式でデータを保存:柔軟なデータ構造を表現できる
- スキーマレス:事前にテーブル定義が不要
- 水平スケールが容易:大量データにも対応しやすい
- 学習コストが比較的低い:SQLに似た操作感
MongoDBの基本操作
MongoDBでは、SQLの代わりに独自のクエリを使います。
// データを検索(SQLのSELECTに相当)
db.employees.find({ department: "営業部" })
// データを追加(SQLのINSERTに相当)
db.employees.insertOne({
name: "田中太郎",
age: 28,
department: "営業部"
})
// データを更新(SQLのUPDATEに相当)
db.employees.updateOne(
{ name: "田中太郎" },
{ $set: { department: "開発部" } }
)
RDBとNoSQL、どちらを選ぶ?
「結局どっちを使えばいいの?」という疑問にお答えします。
RDBが向いているケース
- データの整合性が重要:金融、決済、在庫管理など
- 複雑なデータの関連付け:顧客と注文の関係など
- トランザクションが必要:「全部成功」か「全部失敗」かを保証したい
- データ構造が明確:事前に設計できる業務システム
NoSQLが向いているケース
- 大量のデータを高速処理:SNS、ログ収集、IoT
- データ構造が変わりやすい:頻繁に仕様変更があるサービス
- JSONデータをそのまま扱いたい:APIレスポンスの保存など
- 水平スケールが必要:急成長するWebサービス
組み合わせて使うことも多い
実際の現場では、RDBとNoSQLを組み合わせて使うケースも増えています。
たとえば、ユーザー情報や決済情報はRDB(MySQL)に保存し、ログやキャッシュはNoSQL(Redis、MongoDB)に保存するといった構成です。
まとめ
この記事で解説した内容をまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| NoSQLとは | RDB以外のデータベースの総称(Not Only SQL) |
| 特徴 | 柔軟なデータ構造、高い拡張性、高速処理 |
| 主な種類 | キーバリュー型、ドキュメント型、カラム型、グラフ型 |
| 代表的な製品 | MongoDB、Redis、Cassandra、Neo4j |
| 向いている用途 | 大量データ処理、ログ収集、キャッシュ、SNS |
| RDBとの関係 | 代替ではなく、用途に応じて使い分け・併用 |
NoSQLは、ビッグデータ時代に対応するために生まれた新しいタイプのデータベースです。RDBが不要になるわけではなく、それぞれの強みを活かして使い分けることが大切です。
まずはSQLの基本を押さえた上で、MongoDBなどのNoSQLにも触れてみると、データベースの理解がより深まりますよ。